プラダを着る

霞がかった繁華街の人だかりの中を平然と歩くその男は、プラダのバッグを着ていた。肩に掛けたりして身に付けているのを、着ていると比喩表現しているのではない。まさにバッグに腕を通し、脚を通し、頭を通した状態で人の目を気にせずに歩いていたのだ。一流のブランド品だから丈夫に出来ているのだ、と感心してしまった。そして僕は暑さを忘れる為に、膝の上に伏せた本を持ち上げ、再び読書に没頭し始めた。