Beautiful∞P(美しき無限無限無限ループ)を聴いて書く。

先日の佐々木雅弥ネットライブの時(http://d.hatena.ne.jp/nyaaano/20060603/p4)に味をしめてまた音楽を聴きながら書く。

Beautiful∞P(はループより美しい)
一流大学を出たアナウンサーが顕微鏡のレンズの向こう側で蠢くアメーバを見ながらナレーションをそつなく差し込む。彼は神秘やら生命だとかいちいち人間の夢想系言語を巧みに取り入れてアメーバの存在を訴える。双眼鏡の向こう側、公園、昭和55年、小鹿のオートバイ、手前の横断歩道から信号機を装着した電信柱に寄りかかって公園の中を覗っている。
丸い二つの視点が重なって、そしてアメーバと公園の景色が重なる。誰もいない公園に細胞分裂を繰り返すように子供があふれ出した。子供たちは各々が好き勝手にあっちだのこっちだの先導した気になって駆け回り始める。誰もそこにある、そこに存在する小鹿のオートバイには乗ろうとしない。そうだこれは現代の子供だ。ファーストチルドレンだ!ロストチルドレンだ!ミスター!ねえマスター!早く!
突如地面が地響きを上げて裂けた辺りから何匹もの小鹿が姿を現す。小鹿たちにとってもその事態を把握するのに時間がかかったらしく、しばらくじたばたと慣れない地面に足をどう落ち着けるか試行錯誤していた。やがて小鹿たちが落ち着きを取り戻しコンクリート製の砂場の囲いと地面の隙間に申し訳程度に生い茂った雑草に群がりそれを勿体ぶるようにチビチビと食べ始めた。いつの間にか子供は一人もいない。いや。
一人だけ砂場に残っている。雑草を食べる小鹿はまるでその子供の周りに集まっているように見えなくもない。その子は小鹿の群れには一向に興味も恐怖も無いらしく、無関心を装って砂場遊びに夢中になっている。いや。
砂で遊んでいるのではなかった。その子の背中の向こうに何か得体の知れない物体が見え隠れしている。何故か水着姿のその子はそれを弄ることに夢中になっていたのだ。わざわざ砂場を選んだのは外の凸凹の地面に比べて砂場の砂に幾らか埋め込むように置いた方がその物体が安定するからだろう。カチカチとその物体に付随しているプラスティックのボタンを押す音が聞こえる。やがてその子が何か歌うようにその物体に話しかけた。するとその声と全く同じ音声がその物体から放出される。その子はそんな怪奇な現象に驚きもせず、当然のように満足げに微笑んだままその物体をまた弄り始める。
僕の後ろには小さな繁華街が広がっている。背中に俄かに街のざわめきが感じられる。誰かが繁華街から僕の横を走り抜けて公園の中へ入っていく。突然ライオンにでも追い回されるかのように慌てふためいた小鹿たちは再び地面の裂け目に頭をねじ込むようにして逃げ戻っていった。
「帰りましょう。」
砂場でサンプリングに興じていた子にそう言ってその子の脇の下に手を入れて持ち上げようとしている。
「ほら、自分で立って。」
脇の下から腕を持ってその子を上下に揺すっている。
「チャンチャンチャン♪」
とその子は、これでおしまい、というニュアンスでジングルを口ずさむと仕方なし立ち上がる。すると待ち構えていたようにそのジングルを取り入れた物体がそのジングルを繰り返す。
「チャアンチャアンチャアン♪」
その子の声はピッチを下げられて低いうめき声が物体から放出された。
「またそんな玩具を引っ張り出してきて。しかもそんな使い方どこで習ったの?」
確かに今はっきりと見えた物体のボタンと胴体の隙間に砂に混じって、物置きの隅の蓋の閉まらないダンボール箱に乱雑に積まれていたかのような埃が詰まっている。
「これが世界!」
その子は公園から連れ出そうとするその人に元気にそう訴える。
腕を引っ張られながらも空いた片手で物体のボタンを押しては音を放出させ果敢に
「これが新曲!」
「これがワタシ!」
と自己アピールを続けている。
満足げに笑っているようにも見えるし、頬肉を引き攣らせているようにも見えなくもない表情で手を引かれて公園の入り口までやってくると、突然何かに気付いたように真顔に戻って丸い視点のこっちを覗き返してきた。その瞬間、耳を劈く(つんざく)パルス、七色の閃光、鼻を突く腐臭に僕は卒倒しそうになる。
ダメだ、持ちこたえられそうにない。。
真っ赤に染めたティッシュを鼻に詰めたまま僕は公園のベンチで目を醒ました。それがティッシュだと認識出来ないまま、その異物感に耐えられなくなって無造作に鼻からティッシュを抜き取る。指に入った力のせいで乾いていない鮮烈な鼻血が搾られ、指を伝って手のひらを伝って腕を伝って肘の先から地面へダイブした。
僕はそのまましばらく放心状態で脳に血が巡るのを待ってから立ち上がると公園をあとにした。
あの子は明日もここに来てサンプリングをしているだろうか。
あの子は明日もここに来てサンプリングをしているだろうかあぁぉ・・・ぉぁあかうろだるいてしをグンリプンサて来にここも日明は子のあ。。

当分「聴きながら書く」シリーズでいこうかな。。
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