マウス・オン・マーズが作り出す「状態」


Varcharz / mouse on mars

3曲目の「DUUL」という曲なんですが、只でさえミニマルハンマービートでニューウェービィなジャーマンエクスペリメンタル・ハードロックなんですが、それをマウスオン・エディットしちゃっているので余計にサイケな仕上がりになっておりまして、またそのエディット具合というか壊しっぷりが絶妙でして、バランスが抜群に狂っているんですね。音と音がぶつかり合っていて位相もおかしくて、耳のあちこちにぶち当たる感じがします。こういうのって優秀なエンジニアだからとか何年も音の研究してるからってだけじゃあ到底たどり着けない境地なわけでして、なんかそういうものとは別の次元で動いてるものに何となく感づいている状態でいないと作れないんだろうなあと思うわけです。いや、この加減は現存するものなので偶然そういうポイントに到達することはそう難しいわけではないんです。只、これをOKとする器量の問題なわけです。きっと折角のサウンド構築をダイナマイトで崩壊させてしまうようなミックス加減に困惑してしまって、そこで打ち切れなくてズルズルと調整を続けてしまうわけです。そして結局無難なバランスの曲が出来上がってしまう。ある程度の革新性を持った人ならミックスの何テイク目かにこれに近い状態で一回プレビューしていると思うんです。ただ絶対それをOKテイクにせずに眠らせてしまっている。そういう「状態」のものが世の中に沢山眠っているような気がします。これを今リピートして聴いているとそんな気がして仕方ないのです。築くことは気付くことに似ているのでしょうか。また壊すことは築くことと正反対の行為では無いのではないでしょうか。