下の方でファーーーーーーーー

マイクを一本一本立てて録らなかったことを後悔した。
それほどに日曜のメタフォリックスタジオセッションは有り得ないくらい愉快でパワフルな演奏だった。

メンバーは僕、沢田、佐々木、間野の準レギュラーメンバーに加え沢田くん佐々木くんの同級生、エイちゃん(ちゃんと名前聞いてなかった)が北海道から一時帰省するのを機にその為に広いスタジオを予約したのだ。
時間通りに来たのは僕だけで早々と部屋に入ってギターをアンプにつないで爪弾いていると、やがて知った顔がゾロゾロと入ってきた。エイちゃんは更に遅れて来るとのこと。
そして10分くらいしてのっそりと入ってきたのは大きな体の気の良さそうな兄ちゃんだった。挨拶を終えておもむろに北海道土産のバタークッキーをビニールから取り出して床に置いた。
皆がゆったりと楽器の準備をする中、小さくなって椅子に座って様子を伺うエイちゃん。
与えられたキーボードを前に床にしゃがんでテロテロ引き出すエイちゃん。
業を煮やしてバタークッキーに飛びつく沢田君。僕も一緒にパクつく。

さて準備が出来たところで真ん中に置いたポータブルレコーダーの録音ボタンを押した。
いつもながらマイペースな佐々木くんが準備を進める中(実際彼は世話役お兄さんなので間野くんの細かい設定をやってあげてから自分の準備にかかるのだ)演奏が始まる。静寂の中、僕はボトルネックを右手人差し指にはめてピックアップの正面あたり1,2弦をぐっと押さえつけた、やがてゆっくりとフィードバックが始まり、それに呼応するように間野くんがシンセを弄り始める。文字通り彼はシンセを弄る、弾くのではなく弄って音を出すのだ。それも弄りながら音を確かめているのだ。それがちゃんと演奏になっているのだ!最強のアマチュア間野くん。沢田君は何故か石橋テルミン!何故今更!?でもいいじゃん!そんな中、注目のエイちゃん。パッド系の音色を選んですぅーーっとストレートな音を鳴らしている。時折ピッチベンドで音程を変えたりしてとても穏やかな演奏だ。あいかわらず間野君はガチャガチャ弄っては場をわきまえない(けど和をわきまえた)異次元な演奏を繰り広げる。回りがどう来ようとお構いなしなところが凄い。永遠のアマチュア間野!後半でやっと準備を整えた佐々木くんがここぞとばかりにタイミングを計りながらドラムを入れる。彼のドラムはまさにタイミング命だ。ここにこれが一発!というところでパンッとやる。それが何か絶妙で僕はいつも彼の一発目の音にやられるのだ。
20分弱で一回目の録音を止める。まあまあだ。

そして運命の二回目がスタート。

一分ほどの無音状態。
僕は一回目の演奏でテンションが上がっていた。背負っていたギターを下ろして床に置くと、手許にあった鍵やコインやカポをネックに引っ掛けたり置いたりしていた。やがて間野くんのノイズともコードとも取れない持続音がフェードインしてくる。沢田君はいつの間にかベースアンプの前に移動して座りベースを持っている。沢田君のベースはシンプルで自由でいて筋が通っているから素敵なのだ。
僕はネックに物を置いたりするだけで飽き足らず鞄に入っていたビニールテープをネックにビィーーーっと貼り付けた。ディストーションを踏んであるのでその動作によって音が出る。テープをしっかり貼り付けるために指で擦ったりする。何だかんだでいろんなところで弦が固定されている為、フィードバックが起きている。そして巻きテープをネックの上でもてあそんだりした挙句ブリッジまで真っ直ぐ貼ってあったテープを唐突にオリャァーーーーーーーーーっと剥がすと勢いよく吹き飛ぶボトルネック。飛んでいったボトルネックを見て思わず下を向いて笑いをこらえる。そんなことをやっていると、後半。急にレトロなピアノのコードをチャーン♪チャーンと弾く奴がいる。そこから佐々木くんがドラム叩きまくりーの僕は吹き飛んだボトルネックの代わりに何かを握り締めて(何持ってたか覚えてない)ソロ弾きまくりーの、沢田君はドラマチックにベースライン組み立てーの、あいかわらず下の方でファーーーーーーーー♪って音がしーの・・・・・・・その時間が僕には至福のひと時であったのだ。終わった瞬間、誰ピアノ引き出したのーー!!?と興奮気味でたずねる僕。そう、なんとそのピアノはスペシャルゲストのエイちゃんだったのだ(休憩中に聞いたらスタジオなんて高校以来ですよ、だって)。おそろしーぞー。東上線沿線の奴らはおそろしーーんだって。素人なめんなよーこのやろー。
次の日に北海道に帰るということで今度いつ会えるかもわからないエイちゃんと固く握手を交わして分かれたのでした。
あっセッションは全部で五回くらいやりました。
というわけでこれはCDにして売るのでネットに上げないから日記に細かく書いてみました。
後半なんかレベル振り切って音割れてるけどこの演奏はなんか形にしたいのです。最近こそっとCDをライブ会場で売り始めたので次はこの音源にしようと思います。